湘南鎌倉総合病院 田中 慎司先生

井上:循環器の先生は何人いらっしゃるのですか。

田中:研修医をあわせて、虚血性疾患担当は9人、不整脈担当が3人で合計12人ですね。

井上:夜間当直している際、心筋梗塞の患者さんを専門病院にお送りする適用をお尋ねします。胸痛がありましても、心電図上あまり変化が出てないという場合、送るかどうか迷う場合があるのですが。

田中:私も心臓医を始めて10数年経ちますが、専門医でも心電図だけでは判らないこともあります。ですから早い段階で血管造影をすることが必要だと思います。心臓は急変することがありますから心電図上の変化が少なくても送っていただいたほうがいいです。

井上:緊急の場合でもカテーテル検査の適用となりますと、ほぼ全例なのでしょうか?

田中:そうですね。心筋梗塞が疑われましたら、全例ですね。最近はカテーテルも細くなってますし、使う造影剤も少なくなっておりますし、レントゲンの被爆量もうんと減っているので患者さんの負担も少なくなっています。むしろやらずに見逃す方が怖いですし、患者さんにとっても不幸だと思います。

井上:心電図上の所見はたいしたことないのに、実際カテーテル検査したら狭窄がひどかったということもありますか?

田中:それは良くあります。また逆に心電図上であると思って、血管造影したらなにもないということもあります。臨床なので一つの検査結果がすべてを表しているとは考えていないです。例えば側副血行路があれば、心電図上大きな変化がでません。また心電図上変化があっても再還流していればリハビリだけですむといったこともあります。アンギオをすれば判断材料がそれだけ増えるわけですからした方がいいと思います。

井上:最新の治療とかなにかありますか。また一番大事なことはなんでしょう。

田中:治療はどんどん進歩してますが、やはり大事なのは、時間ですね。早ければ、早いほど重症化しません。治療法ですが現在はそれぞれの状態に合わせた治療をする傾向になってきています。プラークといっても硬いものもありますし、柔らかいものもあります。硬いものは削ってしまいますが、柔らかいと血管からはがれて末梢の方で詰まってしまう可能性もあるのでリーサルプロテクションという治療法で対処したりします。それぞれ硬さや形状が違う血管に同じ治療をしている時代ではなくなってきているのは確かです。

井上:大腸などの検査では従来のようにバリウムを入れなくても、3D‐CTスキャンなどを使って空気だけでポリープなどの診断ができるようになりつつあります。血管などの細かい部位でもカテーテルを入れなくても3D‐CTスキャンなどで、血管の狭窄度などわかるようになれば患者さんの負担も減りますよね?

田中:そうですね。それは現実的なものになってきてますが、コンピューターのソフトの問題や造影剤の量、撮影時間の長さなどの問題がまだあります。

井上:そうなるとカテーテル検査のできない病院でもより確かな診断ができるようになりますね。大動脈瘤の解離とか破裂はどうでしょうか?心臓外科の範囲でしょうか。

田中:部位によりますが腹部大動脈瘤は外科で扱っております。

井上:大動脈瘤解離なんか、カテーテルで内側から解離を貼り付けるなんてことはできませんか?

田中:ありますよ。大動脈ステントというステントに薄膜の付いたのがあります。動脈の分枝のある所は難しいですけど。

井上:それでうまくいけば開胸手術しないで済んで、低侵襲でいいですね。高齢の方で手術する程体力がない患者さんも適用できると思います。また破裂する前に予防的に入れるのもいいですね。神経質な方で、胸が苦しいといって来られる方もいらっしゃいますか?

田中:けっこう多いですよ。(笑) 検査してもなにもないことも多いです。

井上:いろいろありがとうございました。またよろしくお願いいたします。

※先生の肩書き、所属等はインタビュー当時(2004年2月10日)のものです。