大船中央病院 柴田 家門先生
井上:本日は大船中央病院の柴田家門先生のお話を伺いに参りました。まず大船中央病院の夜間の対応についてお聞かせください
柴田:現在、当院では内科系と外科系で一人づつです。脳卒中に関しては当直の医師で対応が無理なときは連絡をしてもらい、指示をしたり、もっと重症のときは出て来たりします。また夜中でも手術が必要な場合には携帯に連絡が来るようになっていて、緊急手術ができるようになっています。 またインターベンションで開頭しないで動脈瘤をつめたり、AVMをつめるといった処置もできます。今そういうシステムで動いていますが、これは救急で脳外科が対応する場合、必ずやらなくてはならないことですね。ただ現在脳外科は3人で診療しています。 が、この人数では日曜、祭日から全てカバーできないということもあります。だから藤沢なども含めた湘南地区の中でいくつかの脳外科の病院が輪番制なりを作れば、脳神経科を網羅できると思うんですよ。ですからそういったネットワークをぜひ作りたいと。
井上:実際には行政区域などの難しい問題もありますね。
柴田:仰るとおりです。こういったものは民間レベルでしっかりした実績をつくれば行政も動きやすくなります。その上で医師会などが働きかけるのが一番いいと思います。
井上:私は現在鎌倉市医師会の救急担当の理事をしておりますが、救急隊員の方はすごく苦労されていると思うんですよ。鎌倉の救急隊が地域外の適切な治療の出来る病院に持っていくことが表立ってできない状況があると思います。
柴田:昼間は脳外科的な診療ができる施設があっても、夜間や日曜祭日まで診れるところはも少ないという現状があります。ですから医師会と病院、診療所が連携しあって対応するという体制をつくることは大賛成です。
井上:脳外科の輪番制は外科医の立場からもありがたいです。というのは一次救急で診て手術の必要がある患者さまの受け皿がないと救急していてものすごく怖いんですよ。足がふらつく程度でみえた方でCTを撮ってみたら慢性硬膜下血腫ですごい量溜まっていたということもよくありますしね。
柴田:専門外の先生も専門医との繋がりがあれば安心して対応できますよね。これがもう少し進んでいくと、CTなどの所見をみた上で適切な判断をしていただくということも可能になっていくと思います。かつて大学などでも神経系のものはなんでもかんでも脳外科へ送られるということがありました。そういった無駄をなるべくなくし、必要な時に緊急対応が100%できるという組織作りが一番大切だと思います。また適切な治療が必要な患者さまを適切な処置が出来る医師が診るということはお互いにとって大切であるばかりか、医療ミスを防ぐという点からも有意義だと思います。
井上:私は昔大きな国道沿いの病院にいたことがありまして、その時はよく交通事故の患者さんが運ばれてきました。脳と同時に腹部の出血もあるといったこともあるので、診る医師の方も的確に判断する必要があります。なんでも診てくれるからと安易に大きな病院に送るということでは困りますよね。
柴田:いまだに意識がないから頭だという短絡的な傾向はあります。救急車で意識不明だといって運ばれて来ても麻痺があるわけではないので、調べてみると単に低血糖だったということもあります。それでも時間がかかれば死に至ることもあるんです。こういうことはプライマリーケアのレベルでチェックさえしておけば防げることだと思います。また地域の中で的確に判断した上でしかるべき施設に送るといった組織作りが重要だと思いますね。
※先生の肩書き、所属等はインタビュー当時(2003年12月1日)のものです。