佐竹 修太郎先生の紹介ビデオ

湘南鎌倉総合病院 佐竹 修太郎先生

井上:不整脈、特にアブレーションでは名人と呼ばれております湘南鎌倉総合病院の循環器内科の佐竹修太郎先生をご紹介いたします。不整脈の救急となりますと、心房細動になりますが、専門外の先生方が、お送りするケースはどういう時ですか?

佐竹:薬剤療法をしていても、月2回以上、2ヶ月続けて発作が起きる場合です。心房細動は、心不全よりも、脳梗塞を起こすほうが重大です。心房細動が12時間以上続くと、血栓をつくり、脳梗塞を起こします。重症の脳梗塞の半分は、心房細動が原因と言われています。

井上:心筋梗塞は、起さないのですか?

佐竹:心筋梗塞よりも脳梗塞につながることの方がむしろ多いです。深酒をして寝ている間に1cmくらいの血栓は簡単に出来ます。これはアルコールで血管が拡張すると水分が蒸発し、血液が粘性になることが原因です。この時出来た1cmくらいの血栓は心臓の冠動脈には入らず、頚動脈に流れていきます。これは冠動脈の入り口が直径が1cm以下だからです。頚動脈に入った血栓は首から上の血流を止め、脳梗塞を起こします。この場合動脈硬化によるラクナ梗塞と違って、すぐ片麻痺になります。昔から"酒飲みの中気"といわれますが、これは大酒を飲む人が脳卒中になりやすいことを言い表しています。以前は、血栓が出来るまで2~3日かかると言われていましたが、実際は12時間程度でできてしまいます。

井上:予防としては、アスピリン、パナルジン、ワーファリンなどを使いますか?ワーファリンはコントロールが難しいため長く飲むのがいやだとおっしゃる患者さんがいらっしゃいますね。

佐竹:アメリカでは、60歳過ぎたらワーファリンを処方しております。アスピリンは、60歳以上は効果が薄れます。先ほど述べましたように、左房など静脈系は血流が遅いため、血小板が関与しない凝固因子だけで1cmの血栓が簡単に出来ます。静脈系は赤色血栓といい、動脈系は白色血栓といいまして、全く違います。凝固因子抑制のためには、ワーファリンが効果的ですね。アスピリンは赤色血栓には効果がありませんので、ワーファリンが必要となります。

井上:ワーファリンは、血液検査を定期的にしなくちゃいけないとか、納豆食べちゃいけないとか面倒ですけどね。ジギタリスで頻脈を抑えるのは、いかがですか?

佐竹:ジギタリスは、即効性が無いのでベータブロッカーが第一選択です。ジギタリスを使うと発作性頻脈が遷延化するので良くないですね。

井上:アブレーションについてお尋ねしたいのですが、適用は?

佐竹:薬剤療法をしていても、発作性頻脈が月2回以上、2ヶ月以上続く場合です。不整脈の発信場所は、肺動脈と左心房の境目に出来ますね。

井上:原因とそこを探す方法は?

佐竹:原因は金属疲労みたいなもので、老化です。肺動脈と左心房の境目は飛行機でいうと胴体と翼をつなぐ部分にあたり、どうしても弱くなっていきます。フォーカスをみつける方法ですが、カテーテル検査でおおもとを見つけます。治療は、ピンポイントで何回もフォーカスを焼くのが一般的なのですが、私が東レと共同開発しているホットバルーンを使えばいっぺんに焼けます。高周波で、肺動脈を60℃で均一にいっぺんに焼いてしまいます。従来の方法が火箸でステーキを焼いているとするなら、ホットバルーンはフライパンで焼くくらいの違いがあります。それでだいたい85%の患者さんが治ります。

井上:不整脈のフォーカスってピンポイントかと思ってましたが、かなり広いのですね。

佐竹:WPW症候群など2mmピンポイントでいいのですが、心房細動の場合10~15mm、全周で6~7cmになりますからピンポイントアブレーションでは、20~30回かかります。ホットバルーンでやれば、1~2回で大丈夫です。

井上:これが普及されれば、先生のような名人でなくてもある程度の技術があれば安全に出来ますね。緊急と定時治療の割合はどのくらいですか?

佐竹:半々ですね。脳梗塞で寝たきりになった患者さんの50%は心房細動が原因ではないかと言われています。ですからアメリカなどでは脳梗塞を起こして寝たきりになる前にアブレーションで原因を取り除こうという風潮になっています。その結果アメリカの政府機関の発表する費用対効果の高い治療法のランキングでは、アブレーションはいつも上位になります。

井上:費用対効果の一番は何ですか?

佐竹:一番は、メバロチンです。アメリカの心筋梗塞を減少させております。2番目がアブレーションです。心房細動をなくし、脳梗塞を予防することがアメリカの国家戦略です。心房細動が多くの寝たきり老人をうむ原因ですので、真剣に取り組む問題ですね。

井上:ありがとうございました。

※先生の肩書き、所属等はインタビュー当時(2004年2月18日)のものです。