湘南鎌倉総合病院 森 貴久先生
井上:今回は湘南鎌倉総合病院の脳卒中診療科部長の森貴久先生のお話を伺いに来ました。森先生は湘南地域の脳疾患関連の研究会『湘南脳卒中研究会』でも中心的な役割をなさっております。このあたりのことをお聞かせください。
森:先生もご存知のとおり、僕がこれまで力を入れてきたのはリハビリテーション関係の勉強会などです。それとまた新しく始めるのが二次予防をキーワードにした救急病院と開業医の先生との勉強会です。 これは勉強会自体が目的ではありません。
専門医以外ではおそらく脳卒中に対して困っていることがあると思うんですね。脳卒中といっても二次予防をするときには決して恐ろしい病気ではないですから、我々としてはどういう点に注意を払って対処するか正確に話をすれば安心して診てもらうことも出来ると思います。
実際に薬の処方や治療法などは開業医の先生の間でも違いがあると思うんですよね。考え方の統一が必要ですし、そういったものを知っておく場があってもいいんじゃないかと。また薬の違いなんかも実際にはあるでしょうし、そういったものがあるのは仕方がないにしても、薬を変える時にどんな薬にするのか、どういうふうな考え方で決めるのか、お互いに知っておく必要があると思うんです。
井上:リハビリの中間施設の問題ですが、鎌倉市で本格的にリハビリが出来る病院は少ないですよね?
森:そうですね。そういった施設が出来て欲しいとは思うんですけど。力を入れている病院はあるのですが、そこでも窓口になってくれる先生が少ないのです。この方ならお任せできるという先生がいらっしゃらないと我々も信頼して紹介できないわけです。
井上:現在森先生がやっておられる中で一般の方に一番知ってもらいたいのはやはりインターベンションになるのでしょうか?
森:頭を切らなくても出来る治療があるというのは一般の方に知ってもらいたいと思うのですが、これはあくまで治療の一つです。それよりもどんな症状だったら脳卒中なのかを知ってもらいたいし、そういった疑いを持ったら一晩待たずにすぐに病院に行って欲しい。まずそこだと思いますね。疑って、来院するということが遅れると全てが後手後手に回ってしまいます。
井上:やはり3~6時間以内に送ってほしいということですね。では次に当直の体制についてお聞かせください。
森:私の脳卒中診療科は当直はしていないです。当湘南鎌倉総合病院の場合、救急総合診療科、ERと呼ばれている科が最前線に立って診療にあたっています。ERの医師が診て脳卒中ではないかと疑った時点ですぐ我々にコールが来ます。これからの救急病院はどれだけ速やかに対応できる体制があるかが問われてくると思います。大学方式で各科が個別に受けると却っておかしくなっていくと思います。
井上:各科別の受付ですと意識がないからとりあえず脳外科に送る。そこでよく調べてみると単に低血糖だったということが未だにあります。
森:それと大学の病院などでは各科の当直の医師に救急隊から直接連絡が入ってくる。そこで各科ごとに空いてるベッドがないとお断りすることがあります。ところが当院はERが窓口になりますから、空いているベッドがあれば産婦人科病棟でも入院させます。
井上:他の診療所から直接搬送される例はありますか?
森:最近増えてきましたね。本当に重症という例は少ないです。というのは、CTがある病院からは本当に脳出血というのが分かってて送られてくるので別ですが、診療所などでは診察で会話できるくらいの人が多いからです。そういった方はタクシーでみえられ、玄関から入ってらっしゃるということがよくあります。
井上:CTが撮れない施設の場合不安になって送ることがあるでしょうしね。
森:そうですね。それはどんどん来てもらっていいと思ってます。それと恐らく我々の科に送ってもいいのかというのがあると思うんです。それには僕という医者が信頼できるのかということをもっと皆さんに判断していただいて、送ってもいいんじゃないかなと思った時には、遠慮せずに電話をかけていただければ。僕は基本的に心配だったら全部送っていただいて構わないと思います。脳梗塞などはなり始めは軽いですから。その日は歩いて来たけど、次の日は歩けなかったといったことになるくらいでしたら、これどうなのかなと思った瞬間に送ってもらったほうがいいと思うんですよ。僕らはそれでいいと思ってますのでどんどん送って下さい。
井上:診断つかないと躊躇っちゃうところありますからね。うちの病院はまだCTがあるからいいですけど
森:そういえば湘南記念病院のMRIきれいになりましたね。(笑)
※先生の肩書き、所属等はインタビュー当時(2003年12月3日)のものです。