道下 一朗先生の紹介ビデオ

横浜栄共済病院 道下 一朗先生

井上:今日は横浜栄共済病院の道下一朗先生に心筋梗塞のお話を伺いにきました。道下先生にはいつも鎌倉市医師会で講演いただいております。まず救急体制についてお聞かせください。

道下:循環器の医師は7名いて当直もしています。うちの病院は夜間ですと、まず内科、外科の医師が診ます。そこで循環器疾患と判断されるとすぐ専門医が診ます。当直医が必要と判断すれば直ぐにでも手術できる体制が24時間整っておりますのでいつでもお送りください。

井上:現在ほとんどの診療施設で心電図はあるので、医療機関にかかりさえすれば心筋梗塞であるとわかるでしょうが、一般の方はどういった症状の時心筋梗塞ではないかと判断したらよいでしょうか?

道下:30分以上続く胸痛で冷や汗が出たりといった症状が一番重篤です。その他にも腹部が気持ち悪い、左手が痺れる、といったこともあります。

井上:やはり最初は心臓カテーテル検査を行うのですか?

道下:最初は心電図、次にエコーをとります。そこである程度アタリをつけて、カテーテルとなります。カテーテル検査で血管の狭い所がわかると、カテーテルの先につけたバルーンで狭い所を広げるのですが、そのときにはがれた血栓を先の細い血管に飛ばして詰まらせてしまうとまた悪くなってしまいます。その為最近ではバルーンが二重になっているカテーテルを使います。カテーテルを狭窄部よりずっと奥に進め、あらかじめ奥のバルーンを膨らませておきます。その後で狭窄部のバルーンを拡張させます。そうしておけば万一はがれた血栓が奥に飛んでいっても奥のバルーンで回収できます。

井上:すごいですね。ところで最初の症状として必ずしも左胸痛という症状とは限りませんよね。

道下:はい。閉塞部位によっては、ただみぞおちあたりが気持ち悪いということもあります。

井上:夜当直していて胸が気持ち悪いというのは気をつけなくてはいけませんね。おなかを触診してみても柔らかくて痛みもないし、そんな時は心電図も取らなくてはいけませんね。

道下:はい、それで血圧が70とか、低いと危険ですね。できれば採血もおこなうといいと思います。単に胸焼けと勘違いして、消化剤とか胃痛止めの薬とか処方してお帰りいただいたら危険です。

井上:心筋梗塞になりやすいのはどんなタイプの人ですか?

道下:心筋梗塞は生活習慣病の最たるものです。ですので糖尿病や高脂血症の方は注意が必要です。それと若い時から病気がちな方よりも、筋骨隆々で仕事もバリバリするようなモーレツ社員が危ないですね。

井上:年代別にはどうでしょうか?

道下:男性の場合は45歳ぐらいから増えてきてピークは65歳です。動脈硬化は年と共に進行しますが、その分食事量が減ったりしますので65歳辺りがピークになるわけです。それとストレスの影響が大きいです。例えば定年を迎えて、ストレスが減ったお陰で狭心症がまったくでなくなったという例も多いです。

井上:女性の場合はいかがでしょうか?

道下:女性の場合は男性よりもピークが5歳程度遅れてきます。女性ホルモンは抗動脈硬化作用があるので、閉経前はほとんど動脈硬化になりにくいですね。ただ閉経後に女性ホルモンが減ると男性よりも動脈硬化の進行が速くなる傾向があるので高齢の女性は気をつけたほうがいいです。といっても女性はそれまで何十年も女性ホルモンに守られてきているので、狭心症虚血性心疾患は圧倒的に男性の方が多いですね。

井上:なるほど。だから筋骨隆々の人はかかりやすいわけですね。そうなると少し女性的な方がいいわけですか。(笑)

道下:あくまで私の印象ですがそういう傾向はあるかもしれません。

※先生の肩書き、所属等はインタビュー当時(2004年1月26日)のものです。