土井 卓子先生の紹介ビデオ

横浜医療センター 土井 卓子先生

井上:今回は、横浜医療センターの外科の土井卓子(タカコ)先生をご紹介いたします。女性医師2名でスタッフも全て女性の乳腺専門外来をなさっております。 土井先生の外来日は、火曜と木曜です。女性特有の病気のご相談や勿論外科一般もなさいます。 乳がんについてお聞きしたいのですが、最近の傾向はいかがですか?

土井:最近は患者さんも変わってきて、乳がんだというとインターネットで調べてこられる方も多いです。次の診療までの一週間の間に乳がんについて勉強してきて細かい療法の違いまで質問される方もいます。ですからすごく知っている人と知らない人とのギャップが大きいです。
また高齢の方でも息子さんがネットで調べてかなり詳しい知識を持っておられる方もいらっしゃいます。60代の患者さんに乳がんですと言ったらお任せしますと一旦帰るんですけど、翌週来たら「セカンドオピニオンは」とか「術後の補助療法は」とか専門的な質問をしてくるので、どこで調べたのかお聞きしたら、息子さんがインターネットでしらべて、プリントアウトしてくれたということがありました。こういう使い方はむしろいいことだと思います。

井上:乳がんの手術は肺がんとか大腸がんに比べ、若年で元気がある患者さんが多いのも特色のひとつです。

土井:そうですね。元気があるのでフットワークが軽いです。(笑)

井上:セカンドオピニオンが盛んなのか、大病院指向がありますね。昔は、乳がんだって告知するかどうかも問題だったのですが、変わりましたね。

土井:今は、治療費や治療した場合の成績まで説明します。例えば抗がん剤でも具体的にコストはこれくらいで1000人のうち何百人に効いて、こういった副作用がありますよ、どうしますかと説明して選んでもらう。がんの治療は生き方の選択でもあるので、患者さんの選択を尊重して無理強いはしません。

井上:手術はどんどん縮小傾向にありますが、もう定型的乳房切断術はありませんか?

土井:ほとんで無いですね。当院では乳房温存術が7割です。あと3割弱は非定型療法になります。

井上:局所再発に関しては心配ないですか

土井:局所再発するケースも稀にありますが、その場合は追加で切除します。最近は切除する大きさをあまり問題にしません。というのは大きくとろうと小さく取ろうと生命予後はそれほど変わらないんです。それよりも補助療法などをどうやるかが生命を決めるんですね。患者さんのほうでもそのことを認識してきているので切除することにこだわらなくなってきました。 それと最近は患者さんのQOLの問題として論じられることが多いですが、これは色々な見方があって、局所である乳房が残っているかというQOLもあるし、再発しないかというQOLもあります。長い目で見て生存していることが大事であって、その上で残せる乳房は残すという方向になってきています。

井上:そのあたりのこだわりは日本よりも欧米のほうが強いようですね。

土井:残すこだわりは日本より強いですね。

井上:それと最近の患者さんは医師とのコミュニケーションを求める傾向にありますね。担当の医師があまりよく説明してくれなかったということは良く聞きます。

土井:コミュニケーションは本当に大事ですね。患者さんが聞きたいことを言い出せる雰囲気を作ったり、細かいケアをするといったことを心がけています。
当院では、コミュニケーション用のツールをいくつか用意しております。
例えばこれ(写真1)を付けているスタッフは乳腺の治療を専門にしているので、お気軽に質問してください。
それと外来に専門書をつんだワゴンを用意しております。皆さん熱心に読んでくださってます。何冊か無くなってしまうのが目下の悩みですけど。(笑)

井上:スタッフは何人いらっしゃるのですか?

土井:乳腺外来ではレントゲン技師が3名、エコー技師が2名、すべて女性です。患者さんとのコミュニケーションをうまくとってくれているので助かっています。

井上:外来はどれくらいの患者さんがいらっしゃるのですか?

土井:混んでいる時は、一日100人ぐらいの患者さんがみえます。そうなると朝8時30分から夜8時30分位まで食事も取らずトイレも行けないです。

井上:女性特有の病気は?

土井:更年期障害や、心の悩み、時には、DVなんてのもあります。女性外来などで来る患者さんはメンタルな問題が多かったりします。こういった患者さんは話を筋道立てて聞いてあげるだけでよくなったりすることも多いですね。また自助グループや女性フォーラムに紹介することもあります。

井上:そういう受け皿を作ることも大事なことですね。

土井:女性フォーラムの団体やフィットネスルームの方に更年期の失禁の方がいらしたらこういう運動、肩こりの方ならこういう運動を教えてくださいと頼んだりしました。そうしたらエアロビクスインストラクターの方がジャズダンスの中にそういった運動を取り入れた体操を考えてくれて。それを更年期の方にやってもらったらすごくよくなったんですよ。
医療が医療の垣根の中だけにいると広まらないですが、女性外来を始めていろいろなところと接点ができたことで変わりましたね。 DVでも外部と連携して対応策と逃げ道を作ることができるようになりました。

※先生の肩書き、所属等はインタビュー当時(2005年3月8日)のものです。